Anthropology and feeling’s diary

人類学に関する本、日常で思ったことなど。まだまだ勉強中なのでご教示ください。

図書館移動アルバイトのエスノグラフィー(?) [1]

大学院受験も一段落したことから、時間を見つけては単発のアルバイトをどきどき入れている。この前も、大手のアルバイトサイトで「ついでに応募」というボタンを押したらひっきりなしに電話がかかってきて、派遣を含めて3つのアルバイトの登録と面接に行くことになってしまった。

大学を3月に卒業した後、夏の大学院入学まで「公式」には所属している身分がないため、派遣会社に登録する際の所属欄をどのように記入したら良いのか分からない。

「学生」ではなく、「会社員」でも「主婦」でもなく、「パート・アルバイト」といえるほどアルバイトもしていない。だからといって「無職」に〇を打つのには少し気が引ける。

何かに所属していなければならないという強迫観念、社会的圧力。

僕はとりあえず「パート・アルバイト」と「無職」と「学生」の全てに〇を打ったと思う。ちゃんとは覚えていないけれど。どっちにしたって、担当者は大して気になんかしていない。

名古屋の中心部にある駅から徒歩1分のところにあるオフィスビルの△階にエレベーターで上がる。その駅の近くには親しい友人がいるため、よく飲みに来るが、このビルにそんな会社が入っているなんて知らなかった。いや、会社なんて、どこにどんなものが入っているかなんてそもそも知らないけれど。

予約していた時間の3分前に着くと、無機質な机と椅子が並べてあり、担当者がそこに座ってくださいという。20分ほどの会社と仕事内容のビデオを見る。終始、何処かで耳にしたことのあるクラシックや洋楽、Jポップのオルゴール・ヴァージョンが流れていて鬱陶しかった。

登録会に参加していたのは、私以外に中年の女性だけだった。ちょうど会社説明のビデオを見終えた時あたりに、その女性の携帯電話が鳴って、退出した。部屋に戻ってくると担当者に登録を辞退する旨を伝え、急ぐように立ち去った。

担当者はそのことを聞いて、驚いたふりをしながらも、数秒後にはよくあることのようにして、おそらく一日に数回、これまでに数百回は繰り返しているであろうという説明を私に対して手早くした。

別で条件の良いアルバイトを見つけてから、この派遣のアルバイトは登録したっきり、仕事の依頼も断っていた。

しかし、ある日、ちょうどいつもやっているアルバイトが2日間休日だったときの1日目の夜7時頃、急にその派遣会社から電話がかかってきた。

若い女性の声で、やけに馴れ馴れしい。「明日どうしても人が足りなくて、人助けと思って働いてもらえませんか?」可愛らしい声だった。

次の日は、ジムにでも行って体を鍛えようと思っていたところだった。

そこまでいうならば、条件を聞いて承諾した。話しているときに電話口の向こう側で笑い声がした。「若い女が馴れ馴れしく電話すれば男は引っかかる」と笑っているみたいだった。

俺自身もちょろいものだと思いながら、仕事を承諾した。

「人助けのための日雇い」ってなんだろうか。電話を切ったあと、そう思った。

 

翌日の朝、指定された地下鉄の出口に集合する。

それはある大学に隣接する駅だった。

平日の朝、学生らしき若者は真っすぐと、自らの目的地に向かう。

僕はただ、担当者が来るまで適当に、待っていた。同じように、そこを彷徨っている人がいたため、話をすると、同じように派遣会社から依頼を受けて来た人だった。

5人が集まると、点呼を取って仕事場に向かう。

派遣会社に連絡をしていたリーダー格の30代くらいの男性。郵便局員に転職したいと話す40代後半くらいの男性、穴の開いた黄土色のTシャツを着た「いかにも」日雇い労働者―西成にいそうな―という感じの40代後半の男性。大学3年生だという男の子、そして自分の5人は、微妙な距離感を伴いながら、それでも同じ日雇いの仕事を請け負ったという宿命を共有しているからこその連帯感のようなものを抱える雰囲気で、ぞろぞろと歩いた。

仕事場らしき場所についてから少しして、雇っている会社のバンが到着した。

使いこまれたさまざまなもののが詰まったバンから、段ボールが地面に置かれた。

「じゃあ、これに着替えてね」と、投げ置かれた段ボールの中には、大手運輸会社の文字が入った、穴が開いてポケットが貫通している制服が詰まっていた。

ちなみに、バンには「(有)」が前につく別の会社の名前が記載されていた。

私と大学生の男の子は、ここで着替えるの?屋外だけど?、といいながら人目を気にしつつ、着替えた。

「じゃあ、若い君たちはこっち来て車に乗って」といわれ、別の場所に連れていかれた。

その人の説明によると、その日の仕事は大学内の所属建物の変更に伴う図書室の移動だった。

同じ大学構内の数百メートルのところからトラックと台車で運ばれてくる、段ボールに詰まった本や雑誌を、決められた本棚に戻すことが仕事なのだ。