Anthropology and feeling’s diary

人類学に関する本、日常で思ったことなど。まだまだ勉強中なのでご教示ください。

It is the essence for life!!!

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10月にトルコへ行くためにモスクワで乗り換えしたとき、現地の友人と話したことを時々思い出す。

自分の今付き合っている人の友人で、一度ブダペストを一緒に案内したこともあるロシア人。彼女は名前をMargoといって、ロシア人にしては小柄で、ウェーブのかかったブロンドの髪に可愛らしい顔立ちを持ちながらも、とてもきっぱりとした性格の持ち主だ。

医学部を卒業して、今はモスクワで病院事務の仕事をしているらしい。

旅行が好きだが、金銭面ではやや苦労しているらしく、医学部時代はホテルのフロントの夜勤を掛け持ちしながら授業に出ていたという強者だ。

家族はモスクワではなく、そこから電車で12時間(!)の地方に住んでいるらしい。

Margoはちょうど今年からモスクワで働き始めた。

 

仕事が終わった午後5時ごろにモスクワの駅まで迎えに来てくれて、夕暮れに染まる赤の広場を案内してくれたり、その目の前の老舗デパートの中にあるBufeに連れて行ってくれたりした。

僕は翌朝7時くらいの便に乗らなければならなかったため、早めに彼女のマンションに行ってビールを飲むことにした。

Margoのマンションはモスクワの地下鉄のほとんど終点にある旧ソ連時代の集合住宅で、安っぽい備え付け家具とコンクリートの古い匂いに満ちた、薄暗い感じのする場所だった。

長く住むつもりもないらしく、生活感はあまり無かったが、電球は温かみのあるオレンジ色で、冷蔵庫にはビールとウォッカが常備されている。(ちなみにウォッカは僕が行った前日の夜に職場で嫌なことがあったために、飲み干してしまったらしく無かった。)

「これがSoviet Styleだよ、どう?」と皮肉をこめて笑う。

「そしてこれがUnited States of America」と冗談めかして、自分のベッドに掲げてある古いアメリカの地図を指さす。

彼女は留学経験も豊富で(スペイン、クロアチアなど)、英語も堪能なこともあり、できればロシアを出て働きたいらしい。

 

少し前に一緒に売店で買ったビールを飲みながらMargoは話す。

「やっぱり、EUかイギリスがいいな。でも、いつも条件に引っかかるの、”EU citizen”っていう項目に。」

 

僕は「ロシアは残念ながらEUじゃないからね」と笑う。

 

Margoは僕の彼女(ハンガリー人)のことに言及して「ハンガリーも何だかんだEUだからいいよね」という。

 

僕も「ハンガリーEUじゃなかったら、僕もそこで進学することにはならなかったと思う。」と返す。

 

「住んでいるところとか生まれたところっていうのは本当に重要だよね。」とMargoは続ける。

 

「オランダから来た韓国系の男子学生と話したことがある。

彼の親は貧乏だったか何かで、赤ちゃんの時にオランダ人の家族に引き取られて育ったらしいの。

それで彼に、私がロシアに生まれたことによって色々な障害があるというと、

彼は『人間は平等に生まれるんだから関係ないよ』っていうの。

だから私は『じゃあ、もし仮に韓国で育ったとしても今の自分と変わらないと思う?』って聞いたの、

そしたら『いや、絶対に違う』って。

じゃあ、今まで何を私たち話してたんだ、って話だよね(笑)

生まれたところっていうのは本当に重要だよ。

It is the essence for life!!! (それは人生の本質だよ!)」

 

僕も大きく頷いた。

それは、自分がハンガリーに留学していた時にも大きく感じていたことだからだ。

イタリア人の友達がパスポートも持たないで留学に来ていたことが分かったときも、そう思った。

それでも日本人向けには意外と様々な条件が緩和されていて、シェンゲン条約圏内に入るときは自動化ゲートを通れたりする。

ロシア人の彼女はきっとそれ以上に色々な障害を経験してきたのだろう。

いわゆる「白人」で、他のヨーロッパ系の人とも見かけも大して違わないから余計それを感じるのかもしれない。

「It is the essence for life!!!」

この言葉は彼女の本心から出た言葉だったと思う。

僕もこれからそう思う機会が増えるんだろうと思った。

 

普段は意識をしない国籍やパスポートが僕たちから自由を奪うとき、僕たちは国家を呪い、世界を憂う。

それは不条理にも世界の仕組みとして僕らに貼り付けられた亡霊だ。

そして今それはますます存在感を増している。