Anthropology and feeling’s diary

人類学に関する本、日常で思ったことなど。

フィールドとの付き合い 『人はみなフィールドワーカーである』

  

 

古本屋で目について買った本。

東京外国語大学のアジア・アフリカ研究所(AA研)の創立50周年記念で発行されたもので個性豊かな著者が短い文章を寄せている。

 

内容は学術的なものではなく、研究者(歴史学・人類学・言語学→人文学)とフィールドとの「出会い」が著者の主観に基づいて書かれたものがメインなので、肩肘張らずに読める。

 

 

多くの民族誌では著者自身とフィールドがどのようにして出会ったのか、フィールドに対してどのような思いを寄せているのかということをほとんど書かれていない。

そこでは調査地の概要から入ることが多く、「どこでもドア」を開けたようにフィールドに目がくらむ。こんな経験ないだろうか。

 

それに私自身も含めてフィールドがまだ決まっていないときに、みんなどんな風に決めて、どんな風に今フィールドと付き合っているのかは気になるところである。本書はそんな人にもいいかもしれない。

 

この本の中で異彩を放っているのは真島一郎の「いのちのフィールドワーク」だ。

フィールドとしていたコートディボワールが内戦に突入し、現地に行くこともできない著者の文章からは果てしない自問自答、人類学者としての懐疑が溢れ出る。

 

フィールドには人間がいて、研究者としての自らも人間である。

こんな「いのちのフィールドワーク」にどう向き合っていけば良いのだろうか。