Anthropology and feeling’s diary

人類学に関する本、日常で思ったことなど。

CEU 第7週

授業期間が始まって第7週。前回の投稿から色々あったこと、思ったことをつらつらと書いていく。

 

CEUではFall, Winter, Spring Termと学年歴が3つの学期に分かれているので(正しくはそれぞれをsemesterならぬtrimesterと呼ぶのだが、大多数の学生・教員は面倒くさいのでsemesterと呼んでいる)、一つの授業は12週間ある。

第7週ということは既に半分を過ぎているということだ。そして、それは同様に中間試験を意味している。試験といっても、この学部はテストではなく、レポートが課せられる。少なくとも大学院レベルの人文社会科学なのだから、記述式や口頭でのテストでは測れない。授業の文献に基づいて設定された問題に回答する形で1000-1500字程度で書く。

授業と文献を読む時間の間を見つけて早く書き始めようと思っているのだが、そもそも授業で課せられる文献すらも満足に読めていないので、まだ書き始められていない。

学部時代、レポートを書くことは実は結構好きだった。自分の考えたことを文献に照らし合わせながら、図書館を行き来し、本に線を引いたり付箋を貼ったりしてまとめたことを基に自分の文章を編み上げていく。卒論を書く経験をしていない自分にとっては、ちょっとした探検のようだった。今回のレポートもそんな感じでやっていければいいのだけど。

 

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授業では中間レポートの他に大体が文献をまとめたプレゼンテーションを一回か二回やることが義務付けられる。

今までに二つの授業でプレゼンをした。学術的なプレゼンを英語でやることは初めてだったので、緊張したが普段使う言語が英語なので、意外とそこまで緊張せずにできた。日常的に授業内の雰囲気がかなりオープンで、間違えたところで否定もしないし、何かしらの建設的な議論につなげることがなされているから、学生が発表者でも萎縮させないのだろう。日本の授業の雰囲気とはかなり異なる。「生意気」みたいな扱いをされることはない。

特に二つ目のプレゼンでは学生が4人しかいないので、ディスカッションを取り入れながらそれなりに上手くできたと思う。

ちなみに、他の学生たちのプレゼンを見るというのも色々面白い。とにかく発表することに慣れている学生がほとんどで、デザインも凝ったものが多い。

残るは学期最後の最終プレゼンだが、それはまた近くなったら考えればよいし、今回のプレゼンはいい練習になったと思う。

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大きめのスーパーに行く途中でみた景色

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二つ目のプレゼンのテーマは自分の関心の環境に関するものだったので、議論が楽しかった。

特に、インドからのPhDの学生が出した例が興味深かった。

インドの環境問題においては大企業の二酸化炭素排出が主な原因なのだが、ドイツからの環境団体がインドに来ては、肉食による二酸化炭素を問題視して「啓蒙」活動を主なっているというのだ。一方、インドではカーストヒンドゥー教の実践において、そもそも肉食をするのはカーストの低い一部の人たちでしかなく、それが西欧的なベジタリン=進んだ考え方という前提と相いれないというのだ。(この話は自分で調べたわけではないので詳しい人がいれば適当に教えてください。)

この例自体が興味深いのと、環境問題において独占的な西洋的な視点(主に環境保護を唱え始めたのは西洋の考え方である)を脱構築しながら、環境保護をしていかないといけないかということが明らかになった。少し話を実践的な方面に進めると、人類学者が環境問題においていかに有益な役割を果たすことが出来るのかが分かる。

ここら辺の話も取り入れながら修論は進めていきたい。

 

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一つの授業では以前も書いたが、研究計画書を書くために社会科学の理論を学びながら、研究計画書を徐々に進めていく。日本で開講されている授業では「~学研究法」の概念に近い。(日本の授業名は内容と一致しないことが多い)

この授業だけはMAの学生全員(32人)で受ける。このような状況になったときに相変わらず人類学や社会学が面白いのは、各々のテーマが一つとして同じものがないということ。特に修士の学生は自分の出身国での事柄をテーマにすることが多いので、地域もかなり広がって、聞いているだけでおもしろい。

ただ、最近の傾向というものはあって、ソーシャル・メディアや医療系、移民はやはり人気。ちなみに環境系のことをやるのは自分しかいなくて少し驚いた。

この授業の終わりまでには最終版の研究計画書を提出する。研究者を育てることに焦点を当てていることがよく分かる。

自分は二年のプログラムなのでまだ余裕はがあるが、一年のプログラムの学生は切迫感がある。しかし、とりあえずアイデアを発表するだけで、方法論も詳しいテーマもまだ全然決まっていない一年のプログラムの学生もいるので少し安心感がある。

 

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最後にキャンパス移動の記録。

がらがらだったキャンパスも徐々に教室にごみ箱が設置されたり、ヒーターやパソコンが大量に山積みになっていたり、飲み物の自動販売機が備え付けられたりしてきた。あと、汚かった灰皿が撤去されて、3mくらい離れた場所に新しい灰皿が設置されたりした。

オーストリアの教育組織(?・OEAD)の人が来て、奨学金や研究資金の説明をしてくれた。ただし、CEUの学生としてこれに申し込みができるのは正式に単位制度がオーストリアのものとなる来年9月22日からだそう。

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大画面はかっこいい

 

 

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