Anthropology and feeling’s diary

人類学に関する本、日常で思ったことなど。

近況報告と久しぶりの一時帰国、それからエコロジーについて

ウィーンの夕焼け しばらくこのブログを放置していたが、新しい環境に入って何かを考えたりするたびに何かを書こうとは思っていた。 しかし、日常がレポートやなんやらで書く機会が多くて、それ以外の自分の時間の中で書くことにエネルギーを使うこともなか…

COVID-19の影響が出てからの生活

はじめに 3月中旬に突然大学が閉鎖になってから一か月半。ロックダウンにも慣れてきて、手のかかる料理をわざわざ作ったりしながら日々を過ごしている。 新型コロナウイルスによって日常が突然変わった(変わり続けている)こと、ウイルスに対する認識、学問…

内山田康『原子力の人類学』

原子力の人類学 ―フクシマ、ラ・アーグ、セラフィールド― 作者:内山田 康 発売日: 2019/09/19 メディア: 単行本(ソフトカバー) 人類学者の内山田康はフクシマの原発事故の後、三陸海岸と福島の浜通りを中心に調査を続けた。フィールドに足を運び、その地で…

アナ・ツィン『マツタケ』

カリフォルニア大学サンタクルーズ校*1の人類学者アナ・ツィン(Anna Tsing)(翻訳だとアナ・チン)によるマツタケを追いかけたマルチスピーシーズ民族誌。 原著は2015年、翻訳は2019年。(この記事は原著と翻訳をどちらも参考にしながら書いているので、訳語等…

CEU秋学期を終えてクリスマス休暇

Shonbrunの片隅にあったいい感じの廃墟 10月末に書いたあと、中間レポートと期末レポートがほぼ間髪入れずに課せられて、初めて学術的なレポートを書くというのはなかなかきつかった。 アカデミック・ライティングの教育は授業が9月のブダペスト・キャンパス…

CEU 第7週

授業期間が始まって第7週。前回の投稿から色々あったこと、思ったことをつらつらと書いていく。 CEUではFall, Winter, Spring Termと学年歴が3つの学期に分かれているので(正しくはそれぞれをsemesterならぬtrimesterと呼ぶのだが、大多数の学生・教員は面…

CEU第4週

CEU

大学が始まって第4週の金曜日の夜、僕はOszkarというシェアライディングに乗りながらこの記事を書いている。 OszkarはUberの長距離版のようなもの、ハンガリーでは公共交通機関があまり機能していないために、このやや法的に、そして安全面でグレーな移動手…

CEUでの大学院生活がスタート

CEU

しばらく更新していなかったが、ハンガリーでの大学院生活がスタートしてたので、これを機にまた時々更新したいと思う。(余裕があれば) 自分の参加するプログラムはハンガリーに本籍を置きながらアメリカの単位制度を利用しているCentral European Univers…

飛行機で観た「ブラック・パンサー」と「グリーン・ブック」

7月19日、中部国際空港から飛行機に乗って、成田で乗り換えし、ヘルシンキへ向かう。 9月から始まるブダペストでの修士のプログラムに参加するには早すぎるが、ハンガリーにいるパートナーと夏を過ごそうと約束していた。 中部‐成田、成田‐ヘルシンキ便は運…

加速し残酷になっていく世界の思想(と人間性への回帰?)

Twitterなどで話題になっていたので木澤佐登志著『ニック・ランドと新反動主義』を読んでみた。 ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想 (星海社新書) 作者: 木澤佐登志 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/05/26 メディア: 新書 こ…

図書館移動アルバイトのエスノグラフィー(?) [2]

乗せられたバンの中で、なぜ若い二人だけが選ばれたのかを社員らしき人が笑いながら伝えた。 「いやさあ、本を並べるんだけど、数字とアルファベット順に並べないといけないから、若い人のほうがいいかなと思ってさ。他のおじさんたちは、酒飲むことしか考え…

図書館移動アルバイトのエスノグラフィー(?) [1]

大学院受験も一段落したことから、時間を見つけては単発のアルバイトをどきどき入れている。この前も、大手のアルバイトサイトで「ついでに応募」というボタンを押したらひっきりなしに電話がかかってきて、派遣を含めて3つのアルバイトの登録と面接に行くこ…

It is the essence for life!!!

10月にトルコへ行くためにモスクワで乗り換えしたとき、現地の友人と話したことを時々思い出す。 自分の今付き合っている人の友人で、一度ブダペストを一緒に案内したこともあるロシア人。彼女は名前をMargoといって、ロシア人にしては小柄で、ウェーブのか…

ブルーベイカー 『グローバル化する世界と「帰属の政治」 移民・シティズンシップ・国民国家』

グローバル化する世界と「帰属の政治」――移民・シティズンシップ・国民国家 作者: ロジャース・ブルーベイカー,Rogers Brubaker,佐藤成基,?橋誠一,岩城邦義,吉田公記 出版社/メーカー: 明石書店 発売日: 2016/10/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (…

EASA2018に参加して

ちょうど2018/08/14~17にストックホルム大学でヨーロッパ社会人類学会(EASA: European Associasion of Social Anthroologist)の大会があり、同じ研究室のPhDの学生が研究出張も兼ねて日本から来るとのことで参加してみた。 日本の文化人類学会にも参加したこ…

東京に異世界を、デリーに近未来を

少し前に「フィリピンのスラム街の子どもたちに夢を届けたい」というクラウドファンディングが話題になって批判にさらされたのは記憶に新しい。 僕自身はまあ、内容が浅はかだなとは思いつつも、別にお金が集まったら行けばいいと思う。批判を受け止めて、少…

オークリー『旅するジプシーの人類学』

旅するジプシーの人類学 (晶文社アルヒーフ) 作者: ジュディスオークリー,木内信敬 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 1986/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 目次 はじめに 第一章 古くなった分類と描写 第二章 誤り伝えられる最近の…

「小さな物語」と「映ってしまっている」ものについて

久しぶりの投稿になってしまったが、今回はいつもの記事とは違ってちょっと話題になっている話から。 映画『万引き家族』についての云々で少し気になって是枝裕和監督のHPの文章を読んでいたら「そうだよな、これって人類学・社会学も同じだよな」と一人で感…

T.インゴルド 『メイキング』第一章「内側から知ること」

メイキング 人類学・考古学・芸術・建築 作者: ティムインゴルド,金子遊,水野友美子,小林耕二 出版社/メーカー: 左右社 発売日: 2017/09/14 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る ユニークな著作を発表しながら第一線で活躍する人類学者イン…

当事者研究―「つながり」のための言葉を紡ぐ

つながりの作法 同じでもなく 違うでもなく (生活人新書) 作者: 綾屋紗月,熊谷晋一郎 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2010/12/08 メディア: 新書 購入: 9人 クリック: 165回 この商品を含むブログ (27件) を見る 実は別の本をまとめようと思って調べだし…

亡霊と同一化 アンナ・カヴァン『氷』

氷 (ちくま文庫) 作者: アンナカヴァン,Anna Kavan,山田和子 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2015/03/10 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (16件) を見る たまには、人類学とか関係なく本当にただ雑記をしてみる。 この本は昔、自分の好きなアーティ…

ポストコロニアル論争を詩的にふりかえる 今福龍太『クレオール主義』

クレオール主義 (ちくま学芸文庫) 作者: 今福龍太 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2015/04/24 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ジェイムズ・クリフォードによる『文化を書く(Writing Culture)』をはじめとする、人類学に大きな論争を巻き…

「徘徊」を真剣にとらえ、ともに飛び立つ 坂口恭平『徘徊タクシー』

徘徊タクシー (新潮文庫) 作者: 坂口恭平 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/03/01 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 認知症の人が町をさまようとされる徘徊。 家族やケアワーカーなど周囲の人びとにとっては「訳が分からず」「困った」ものか…

生命は続く。 Life goes on. 映画「21g」

BABELに感銘を受けたのでアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の別の作品「21g」を観た。 赤の他人同士が運命によってつながっていく様子が描かれる点は同じだが、今回のテーマは「生命は続く(Life goes on.)」というところか。 これもまた人間の悲…

ダナ・ハラウェイ「サイボーグ宣言:二〇世紀後半の科学、技術、社会主義フェミニズム」

猿と女とサイボーグ ―自然の再発明―新装版 作者: ダナ・ハラウェイ,高橋さきの 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2017/05/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 西欧主義的な二分法、全体性(ホーリズム)を攪乱する存在としてのサイボーグ。 そ…

バベルの世界―銃、性、言語、誤解

先日、東京都美術館で開催されていた「バベルの塔展」に行ってきた。 babel2017.jp 絵画自体はもちろん素晴らしかったのであるが、絵画にも映画にも何回も使われるモチーフである「バベル」について前から書きたかったことがあったので書いてみる。 バベルと…

アドリアナ・ペトリーナ『曝された生 チェルノブイリ後の生物学的市民』

曝された生 作者: アドリアナペトリーナ,粥川準二,Adriana Petryna,森本麻衣子,若松文貴 出版社/メーカー: 人文書院 発売日: 2016/01/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 最大規模の原発事故後、放射線を大量に浴びたウクライナの人びと…

国家・権力・知  萱野稔人『権力の読みかた―状況と理論』

権力の読みかた―状況と理論 作者: 萱野稔人 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2007/07 メディア: 単行本 購入: 5人 クリック: 104回 この商品を含むブログ (59件) を見る フランス哲学を専門とする萱野稔人がフーコーの権力論について非常にわかりやすく解説…

E・ヴァレンタイン・ダニエル「悩める国家、疎外される人々」

他者の苦しみへの責任――ソーシャル・サファリングを知る 作者: A・クラインマン,J・クラインマン,V・ダス,P・ファーマー,M・ロック,E・V・ダニエル,T・アサド,池澤夏樹[解説],坂川雅子 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2011/03/23 メディア: 単行本 …

アーサー・クラインマン編『他者の苦しみへの責任 ソーシャル・サファリングを知る』

他者の苦しみへの責任――ソーシャル・サファリングを知る 作者: A・クラインマン,J・クラインマン,V・ダス,P・ファーマー,M・ロック,E・V・ダニエル,T・アサド,池澤夏樹[解説],坂川雅子 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2011/03/23 メディア: 単行本 …